雑種犬の頚部に発生した軟部組織肉腫の診断について

今回は、雑種犬の頚部に発生した軟部組織肉腫の治療経過をご報告致します。

　　　　　　　　　　　　　　　　　にこちゃん　　保護犬　推定11歳齢

　　　　　　　　　　　　　　

定期的に当院へ受診されており、身体検査を実施した際に右頚部にテニスボール大の腫瘤が認められました。

飼い主様へ針生検による細胞診検査をご提案し、実施しました。

細胞診の結果「軟部組織肉腫」が疑われました。

軟部組織肉腫とは、犬の皮下組織に発生する悪性腫瘍です。

腫瘍の確定診断をするために、「細胞診」ではなく「組織生検」が必要となります。

組織生検は、全身麻酔下にて腫瘍の一部を切除し、病理組織検査を実施します。

また、軟部組織肉腫は体の深部へ浸潤する可能性が高く、

正確に腫瘍の浸潤度合を把握するためには、CTによる画像診断が必要となります。

当院では、CT検査が実施できないため、他院へ検査依頼をさせて頂きました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　CT検査画像より構築した際３D画像

組織生検により病理組織検査結果より「血管周皮腫」と診断されました。

また、CT検査画像より「一部、筋肉への浸潤の疑い」のある検査結果でした。

さらに、腫瘍の周囲には「頸動脈」「頸静脈」「食道」「気管」が存在しており

手術時に損傷するリスクが予想されました。

「軟部組織肉腫」の治療は、「外科手術による切除」が、第一選択となります。

また、「周囲組織に浸潤する腫瘍特性」から手術を行う際

周囲の組織を含めて腫瘍と一緒に切除する必要性があります。

今回、ニコちゃんの場合

周囲の組織（頸動脈、気管、食道）を同時に切除する必要がありましたが

術後のQOLを考慮した際、周囲組織の切除は適切ではないと考えました。

飼い主様との治療方法のご相談し、「腫瘤のみ切除」を行い

病理組織検査の結果、完全切除が出来ていなかった場合

補助治療として「術後抗がん剤による化学療法」を行うこととなりました。

次回、治療内容をご紹介致します。