高齢猫の糖尿病ケトアシドーシス

昨日、高齢猫のらくちゃんが無事退院しましたので、治療経過のご報告です。

一週間前に、食欲不振、多飲多尿を主訴に当院を来院されました。

身体検査では、十度の脱水が認められました。

血液検査、尿検査、レントゲン検査、腹部超音波検査を実施し

高血糖、血清ケトン体陽性、尿糖および尿ケトン体陽性でした。

「糖尿病ケトアシドーシス」と診断しました。

また、腹部超音波検査の結果から「慢性膵炎の悪化所見」が認められました。

猫の糖尿病は、体からインスイリンが分泌されているにもかかわらず

インスリンがうまく体の中で働かない2型糖尿病です。

つまり、糖尿病を引き起こす他の疾患が背景にあり、その疾患が悪化した際に

糖尿病の症状が顕在化します。

糖尿病ケトアシドーシスは、緊急疾患であり早急な治療介入が必要です。

飼い主様へご説明し治療の同意が得られたため、入院治療を開始しました。

今回、糖尿病ケトアシドーシスに対して「レギュラーインスリンの持続点滴と輸液治療及び抗生剤治療」

慢性膵炎に対して「低用量プレドニゾロンの投与」を実施しました。

                  レギュラーインスリンの持続点滴

                    低分子ヘパリンの持続点滴

治療1~3日目は、食欲廃絶であったため、強制給餌を行い食事治療も実施しました。

治療4日目には、食欲の回復を認めたため、レギュラーインスリンの持続点滴から

皮下投与のインスリン注射へ切り替え、糖尿病ケトアシドーシスの状態から回復しました。

糖尿病の治療において、もう一点重要なことがあり

「血糖曲線の制作」です。

血糖曲線とは、一日の血糖値の変動を調べる事で、定時的に血糖値を測定していきます。

インスリン注射後4~6時間で最も血糖値が低くなることが理想です。

従来は、毎回採血を実施し、血糖値を測定していました。

近年、人用の経皮的血糖測定機器が猫でも使用可能になったことから

当院でも使用しています。

この機器を使用することで、毎回採血を行うこともなく血糖値を測定することができます。

入院中また退院後も自宅にて血糖値を測定し、血糖曲線が製作できます。

入院中の血糖曲線は比較的良好で、インスリン注射後4時間で最も低い血糖値になりました。

退院後は、ご自宅で食事とインスリンの治療を実施していただくこととなりました。

猫の糖尿病は、中〜高齢期の猫でよく見つかる病気です。

「最近、飲水量がかなる増えた」「食欲にムラがある」などの症状は

糖尿病の予兆である可能性があります。

気になる症状がありましたら、一度当院までご相談下さい。

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